MATHGRAM

主に数学とプログラミング、時々趣味について。

バーゼル問題の証明〜sinを因数分解しちゃう発想ったら...〜

僕が何回も読み直してる愛読書、数学ガールで一番好きな部分。最初に読んだ時は衝撃でした。本記事は定番の証明方法、マクローリン展開を使う証明です。

問題を提起したのはイタリアの数学者ピエトロさん。解法を編み出したのはオイラーさん。やはりオイラーさんは紛れもない数学界の神ですね。ちなみに解かれるまで約100年かかってます。

 

バーゼル問題とは?

まずは \zeta 関数の紹介から。ゼータって読みます。こいつほんと面白い。作ったのはリーマンさん。

 \displaystyle \zeta(s) = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^s} \\ n \in \mathbb{N}

 

総和記号を使ってる時点で n自然数の集合に属しているなんて、別に書かなくてもいいんですけど、

"一見、自然数の総和なのに \zeta(-1) \displaystyle -\frac{1}{12}になる"

とかの不思議を強調したいので敢えて書いてます。まあこの記事ではそこに言及しませんが。むしろ s の定義域の方が大事なんですけど、まあ今はいいんです。

あとこの関数はバーゼル問題が解かれたあとに、リーマンさんが問題の一般化を図るため定義した式です。歴史的には順番が逆だけど知ってほしい(自分の研究テーマなんです。)ので、導入しちゃいます。

くそ脱線しましたが、とにかくバーゼル問題とは、上で定義される \zeta 関数に s = 2を代入した式がいくつになるん?って問題です。ちゃんと書くと以下。

平方数の逆数の総和はいくつか?

それでは証明いきましょう。

証明

タイトルにもあるように、証明の主役になるのは \sin関数です。流れとしては、

  1.  \sin関数を2通りの表現をする。
  2. そいつらを等号で結ぶ。
  3. 恒等式と見て係数比較。

って感じです。ではさっそく。

1.  \sin関数を2通りの表現をする。

まず1つ目の表現方法はマクローリン展開テイラー展開の0近傍バージョンですね。

 \displaystyle \sin(x) = x - \frac{x^3}{3!} + \frac{x^5}{5!} - \frac{x^7}{7!} + \cdots

 

今回はここまでで十分なんで、一般化された項は書きません。少し変形しておきましょう。

 \displaystyle \frac{\sin(x)}{x} = 1 - \frac{x^2}{3!} + \frac{x^4}{5!} - \frac{x^6}{7!} + \cdots

 

 両辺をxで割っているのは後々のためです。余談ですがこいつをsinc関数って呼んだりもします。

 

そして2つ目因数分解 \sin(x)因数分解しちゃいます。因数定理に基づいて因数分解していきます。まあ \sin(x)=0になる xを探すってことですね。これだけ。

 \sin(x)=0を満たす x は、

 x = n\pi \quad n \in \mathbb{Z}
 

なので、因数分解すると以下。

 \sin(x) = x(x + \pi)(x - \pi)(x + 2\pi)(x - 2\pi)(x + 3\pi)(x - 3\pi) \cdots

 

ここでちょっとテクニック。後々のために、こんな変形をします。一気にいきます。

 \displaystyle \sin(x) = x(1 + \frac{x}{\pi})(1 - \frac{x}{\pi})(1 + \frac{x}{2\pi})(1 - \frac{x}{2\pi})(1 + \frac{x}{3\pi})(1 - \frac{x}{3\pi}) \cdots
 
 \displaystyle \Leftrightarrow \frac{\sin(x)}{x} = (1 + \frac{x}{\pi})(1 - \frac{x}{\pi})(1 + \frac{x}{2\pi})(1 - \frac{x}{2\pi})(1 + \frac{x}{3\pi})(1 - \frac{x}{3\pi}) \cdots

 

和と差の積の部分をまとめると、

 \displaystyle \frac{\sin(x)}{x} = (1 - \frac{x^2}{\pi^2})(1 - \frac{x^2}{2^2 \pi^2})(1-\frac{x^2}{3^2\pi})\cdots
 

これで2通りの表現が完了しました。7割証明終了です!

2. そいつらを等号で結ぶ。

結びます。

 \displaystyle \frac{\sin(x)}{x} = (1 - \frac{x^2}{\pi^2})(1 - \frac{x^2}{2^2 \pi^2})(1-\frac{x^2}{3^2\pi})\cdots = 1 - \frac{x^2}{3!} + \frac{x^4}{5!} - \frac{x^6}{7!} + \cdots

以上。

3. 恒等式と見て係数比較。

 xの二乗の項で係数比較をしたいのですが、少し因数分解側がわかりにくいです。綺麗に係数比較するために、ここで解と係数の関係を考えてみましょう。

以下のような無限積があるとする。

 (1 + ax^2)(1 + bx^2)(1 + cx^2)(1 + dx^2) \cdots

 

左から順に展開していくと、

 (1 + (a+b)x^2 + abx^4)(1 + cx^2)(1 + dx^2)\cdots

 

 (1 + (a+b+c)x^2 + (ab+bc+ca)x^4 + abcx^6)(1 + dx^2)\cdots

 

ってな感じで規則的に増えていきます。この規則を \displaystyle \frac{\sin(x)}{x}因数分解した式にも適用すると、 x^2の係数は以下のようになります。

 \displaystyle \frac{1}{\pi^2} + \frac{1}{2^2\pi^2} + \frac{1}{3^2\pi^2} + \cdots

 

もうお分かりでしょうか。x^2の係数を式で結んでみましょう。

 \displaystyle \frac{1}{\pi^2} + \frac{1}{2^2\pi^2} + \frac{1}{3^2\pi^2} + \cdots= \frac{1}{3!}

両辺に \pi^2をかけます。

 \displaystyle \frac{1}{1^2} + \frac{1}{2^2} + \frac{1}{3^2} + \cdots= \frac{\pi^2}{6}

 

はい、これにて証明終了です。QEDです。

平方数の逆数の総和 \displaystyle \frac{\pi^2}{6}

 

変な数字に収束しましたね。

全く関係の無さそうな\piが二乗の形で登場するのはとっても不思議です。

ここに\piが出現する"意味"は僕にはまだまだわかりません。。。

勉強します。もし、どなたか詳しい話を知ってたら教えて下さい!

 

今回はここまでにしておきますが、ゼータ関数関連にはまだまだまとめたいことがたくさんあります。それらの話はまた今度。

 

 

それでは!

 

p.s. カテゴリーにゼータ関数つくろ。